私は食べものを食べるとき、それを見て自然に「食べたいな」という気持ちが持てるかどうかで判断するべきだと思っています。
そのためにもその食べ物が「自然か、不自然か」を見極める目を持っておくことは大切です。それが「身体にいい食べもの、悪い食べもの」の判断基準につながるいちばんいい方法だと考えているのです。
具体的な食品を例にあげて説明しましょう。
牛乳・・・ほかの動物の母乳を飲んでいるのは不自然
日本人の牛乳信仰も根強いものがあります。牛乳は健康にいいと長い間いわれ続けてきていますし、学校給食や病院食にさえ必ず牛乳はついてくるので、無理もないでしょう。
でも、ちょっと考えてみてください。牛乳は人間にとってとても不自然な飲み物なのです。
人間の赤ちゃんは母乳を飲みます。そして牛の赤ちゃんも母乳を飲みます。牛の赤ちゃんにとっての母乳とはつまり、牛乳のことです。
牛乳は本来、牛の赤ちゃんが飲むものです。地球上に存在する生物で、他の動物の母乳を飲んでいるのは、人間だけなのです。
基本的に母乳は、歯が生える前のまだ立つこともできない赤ちゃんが飲むものです。人間だって、1~2歳で多くの赤ちゃんは母乳を飲むのをやめ、歯で噛める食事に移行します。それなのに、人間だけが、大人になっても牛のおっぱいを飲んでいるのです。
カルシウムをとるために牛乳を飲んでいるという人もいるでしょう。ところが、フィンランドやカナダでは、多くの人たちが牛乳を飲んでいるにもかかわらず、骨粗鬆症の患者さんが多いという報告もあります。もちろん日照時間が短いということもあるかもしれませんが、少なくとも牛乳が骨粗鬆症の予防になっているかどうかは疑問です。
しかも、カルシウムを含む食品なら、小松菜や昆布、わかめ、煮干しのほうがずっと多く含まれています。寒冷地の人たちは、このようなカルシウムが十分に取れないために、牛乳をたくさん飲んでいるのです。本来、それと同じことを日本人が行う必要はないのではないでしょうか。
もちろん、おいしいから、食べたいから乳製品をとるのはいいと思います。私も牛乳こそ家には置いていませんが、生クリームやチーズは好きですし、たまのお楽しみにケーキもおいしくいただきます。でもそれは、カルシウムで身体を強くしたいとか、骨を丈夫にしようという目的で食べているわけではありません。食べたいな、と思ったときに嗜好品として楽しむべきものなのです。
加工食品・・・常温で腐らないものはなるべく避ける
今私たちが日常生活で口にしている食品のなかには、常温でも腐らないものがたくさんあります。本来食品は、ほうっておいたら腐るものです。腐らないということは、はっきりいってしまえば何らかの薬が加えられているということです。食品は加工すればするほど不自然になっていきます。
私たちは食べものを介して、1日に何十種類もの薬を身体のなかに入れていることになります。これは身体が未熟な子どもでも同じです。考えれば考えるほど、怖いことだと思いませんか。
食品添加物は、食べものを加工したり保存したりするときに使われる化学物質のことです。具体的に用途に分けていうと、甘味料、保存料、着色料、化学調味料、増粘剤・安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤などがあります。
食品パッケージの裏を見ると、サッカリンNa、亜硝酸Naなど、一般の消費者にはわかりにくい表示になっています。
たとえばスナック菓子などには必ず、アミノ酸調味料などのうまみ成分が入っています。メーカーは何とか食べてもらいたいので、「やめられない止まらない」などのキャッチコピーで、やめられないほどおいしいものというイメージづけをします。
コーヒーに入れるクリームや惣菜入りのパッケージされたパンなど、本来なら日持ちしないはずのものが腐らないまま常温で保存できる、油で揚げたポテトチップが半年後にも食べられるということも、どう考えても不自然です。
「脂肪分ゼロ」「カロリーオフ」「糖類ゼロ」といった食品も同じです。先述した牛乳の話でいえば、無脂肪の牛乳や、カルシウム強化の牛乳などは、その時点で牛乳ではなく加工品です。そうまでして牛乳をとる必要があるのか、カルシウム強化の食品をとったからといって、本当にカルシウムがそのまま吸収されるのかは非常に疑問が残ります。カルシウムが吸収されるには、マグネシウムなど他の栄養素とのバランスも必要になりますから、カルシウムだけとることにどこまで意味があるのかということなのです。
カロリーオフや糖類ゼロ食品を選ぶ人は、もしかしたら健康意識が高い人なのかもしれません。ですが、カロリーを減らすためには何らかの不自然な加工がされており、糖類をゼロにするかわりに何らかの人工甘味料が加えられているということなのです。
ちなみにゼロカロリーのものを食べても、やせることはありません。なぜなら、もうお分かりの通り、人工甘味料=添加物が含まれているので、異物を解毒するために酵素がたくさん使われ、代謝が悪くなるからです。
また今、手軽で価格が安い食品も増えています。
でも安い食べものには安く抑えられるだけの理由があるのです。
100円でビーフ100%のハンバーガーが食べられるとしたら、それは大きい牛に育てるために、ホルモン剤を加えて早く成長させているのかもしれません。早く成長させれば、それだけエサ代がかからないからです。
もちろん、だから高価な食品を選びなさい、安いものを買うのはやめなさいということではありませんが、安いものにはからくりがあるのだということは知っておいたほうがいいでしょう。
食品添加物など自然には存在しないものが私たちの身体のなかに入ると、薬と同じですから、体内ではそれを異物ととらえ、解毒するために大量の酵素を使わなければならなくなります。
ここまで本書を読んでこられた人なら、大量の酵素が使われると、免疫力が下がるのはもうわかりますよね。
それでも食品添加物を摂取し続けると、解毒しきれなくなり、身体に蓄積されていきます。すると身体はどんどんさびて老化が進んでいくのです。
アメリカ人は着色料がふんだんに使われた色鮮やかな食品を食べていて、日本食は色彩もやわらかいから、アメリカ人ほど食品添加物を摂取していないといったイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
ところが日本人の体格などを加味して食品添加物をとっている割合は、アメリカ人の2倍といわれているのです。ちなみにドイツ人と比較すると7倍という報告もあります。これは食品からだけでなく、薬好きということも大きく影響しているでしょう。薬も立派な添加物なのですから。
日本人は死んでもなかなか腐らないといわれているほどなのです。これは、体内に防腐剤が蓄積されているからにほかなりません。
現代の食生活で食品添加物を一切とらないようにするのは不可能です。ただ、できるだけ食品添加物の入っていないもの、入っていても量が少ないものを選ぶようにする心がけが必要でしょう。
トランス脂肪酸・・・海外では規制されている有害物質
「バターは高価で脂肪分が高いからマーガリンにしています」
という人も多いのではないでしょうか。
マーガリンは精製した植物油に発酵乳、食塩、ビタミン類などを加え人工的に練り上げた加工品です。
室温で液体であるはずの食用油が、マーガリンという形をとると、常温でも固形のまま。温かい場所に置いていても、カビが生えることもなく、虫が近寄ることもなく、そのまま変わらない状態を保っています。とても不自然ですよね。
ですから、胃に入っても消化することができないのです。つまり、加工食品ですから、体内に入れば異物とみなされ、無駄な酵素が使われることになります。
また、マーガリンにはトランス脂肪酸が含まれています。トランス脂肪酸はマーガリンだけでなく、ファストフード食品やスナック菓子などにも多く含まれています。生クリームやホイップクリーム、ラクトアイスやチョコレートの表示に「植物油」と書かれたものも同様です。
トランス脂肪酸とは、善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やして、高血圧や心筋梗塞を引き起こし、発がん性がある有害物質とされています。欧米では販売禁止になっているところや、含有量の表示を義務づけているところもあります。
ところが日本ではそのような制限はなく、学校給食でも使われています。
マーガリン=健康な植物油という思い込みは間違っています。日本でも早急に規制するべきだと考えます。
私がこのような話をセミナーでしたときに、「先生がマーガリンはよくないといっていたので、高級ホテルのマーガリンに替えました」といった方がいました。もちろん、高価なものでもトランス化されている事実に変わりはありません。
高価だから、安心なお店で売っているからという目で食品を選ぶのではなく、避けられるリスクはできるだけ避けてほしいと思います。
精製食品・・・精製されたものは栄養素が失われている
白米、白いパン、白砂糖、小麦など「白いもの」は精製された食品です。
もちろんパンよりはお米を食べてほしいですし、人工甘味料よりは砂糖のほうがいいのですが、なるべくなら白いものは選ばず、玄米やきび砂糖を選ぶほうがいいでしょう。
食品を精製して白くすること自体、不自然です。精製食品は、その過程でビタミンやミネラルなど大切な栄養素がほとんど失われている状態なのです。
それだけではありません。
精製食品を食べると血糖値が上がりやすくなります。血糖値が上がれば、すい臓からインスリンというホルモンが大量に分泌されます。インスリンは肝臓や筋肉に働きかけて糖を貯蔵させ、血糖値を下げますが、貯蔵しきれずに余った糖は、中性脂肪として脂肪細胞に取り込まれます。結果として太りやすくなるのです。
血糖値が急上昇しないように、インスリンが大量に分泌されないようにするには、野菜などの食物繊維が豊富な食品から食べるなど食事の順番を意識する必要があります。しかしそのためには、野菜を献立にとり入れる必要があります。
朝食が食パン1枚だけ(おまけにマーガリンを塗っている人もいます)、昼食が丼ものだけ、うどんだけ、などといったように、精製食品だけですませてしまう人も多いでしょう。
そうなるとビタミンやミネラル、食物繊維が圧倒的に不足するだけでなく、代謝の悪い、太りやすい身体になるので注意が必要です。野菜から食べるように意識すると、自然に食事の内容も整ってくるのではないでしょうか。
食品の自然、不自然について述べてきましたが、私は「これは食べてよし」「これは食べるな」などというつもりはありません。それは私が決めることではなくて、食べる人が自分で「感じる」ことだと思うのです。食べるものに神経質になりすぎると、それもストレスになってしまい、免疫力を下げてしまいます。
食べものに気を使いすぎた結果、おいしく食べられなければ、食事の意味がなくなってしまいます。
「このパンはどこの小麦を使っていますか?」「トランス脂肪酸はどれくらい入っていますか?」などといちいち気にするくらいなら、食べなければいいだけのこと。健康のためには、基本的に野菜中心の和食がいいと思いますが、おつき合いもあれば、たまには身体によくないのはわかっていても食べたいというときもあるのは当然です。
普段の食生活に気をつけてさえいれば、たまに不摂生をしても大きな影響はありません。健康的な食生活を送るためには、厳格にしすぎないことも必要です。何より続けること、習慣づけることがいちばん大切なのです。ただし不摂生な食生活が続いたら、しばらくは食生活に気をつけるなど、バランスを意識するようにしましょう。
(文=宇多川久美子 「長生きするのに薬はいらない」より抜粋)
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