薬が”お土産化”する日本の医療
日本の保険医療制度は、基本的には上限がありません。「これだけ薬をもらったら、自己負担が増える」ということもありません。
仮に、4剤までしか保険が適応できないとなれば、「どの薬を減らして、どの薬を足そうかな」と考えると思います。しかし、現実はそうなっていません。そのため、多くの患者さんは、どうしても「もらえるものはもらっておこう」という思考になりがちです。
病院側にも問題があります。医師が「とりあえず、お薬出しておきますね」という言葉を使うのを聞いたことはありませんか。患者さんは症状を訴えるけれども、血液検査をしても、レントゲンを撮っても、何もない。その場合でも、お医者さんは「とりあえず」薬を出してしまう。
でも、よく考えたらこれはおかしなことです。
というのも、病名さえもわからないのに、「とりあえず」ということで薬を出しているのですから。何のための薬かもわからないわけです。
医師の側からすれば、「何も出さなかった」と患者さんを帰すよりは、そのほうが患者さんにとってもいいと考えているのでしょうか。
「病名もわからないのに、とりあえず出せる薬」とはどんなものでしょう。
やはりそこには、患者さんが薬を欲しがるから医師も出している、という側面もあるのだと思います。せっかく病院に行ったのに何も薬が出なかったら、「とんでもない先生だ」と思う患者さんが多いことも実感として知っています。
「3時間もかけて検査して、こんなに痛いって言っているのに、何もないなんて。あそこの病院はもう行かないほうがいいぞ!」と言われてしまう可能性を危惧しているのです。
ですが、本来、薬はできるだけ飲まないほうがいいに決まっています。だから、「とりあえず出しておきます」と医師に言われたら、「ありがとうございます」と言うのではなく、「ちょっと待ってください。これは何の薬ですか」と、きちんと確認すべきなのです。
少なくとも、薬は「とりあえず」飲むものではありません。
なんだかわからないまま薬を処方してしまう病院と、なんだかわからないまま薬を患者さんーー。この光景が変わらない限り、高齢者の飲む薬の量が減ることはないのかもしれません。
(宇多川久美子著書:『薬剤師の本音』より抜粋)
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