作り笑いでも、笑えば免疫力が上がる
「笑うと免疫力が上がる」と言うと、「そうですよね」という人と、「本当ですか?」という人に分かれます。
あなたはどちらでしょうか。
笑いが人体に及ぼす影響については、欧米で先に研究が始まりましたが、日本でももう20年以上にわたって研究されています。たとえば、漫才や落語を聞かせたり、お笑いのビデオを見せたりすると、「免疫細胞の一種であるNK細胞が活性化する」という研究はいくつもありますし、関節リウマチやアトピー性皮膚炎の症状が緩和されたり、血糖値の上昇が抑えられたりするという研究もあります。
ではなぜ、笑うと免疫力が上がるのでしょうか?
ごく簡単に言うと、まず、おもしろいことや楽しいこと、嬉しいことがあると、自律神経の中枢である脳の視床下部に興奮が伝わり、セロトニンが放出されます。セロトニンは血液やリンパ液に乗って身体中に運ばれ、NK細胞を刺激します。すると、NK細胞が活性化して、異物を排除する働きが高まるため、免疫力が高まるのです。NK細胞はまた、体内で毎日何千個も生まれるがん細胞を退治するとも言われていますから、笑うとがんになりにくい、あるいはがんが治りやすいとも考えられます。
一方、視床下部から放出されたセロトニンは、私たちの表情筋にも作用を及ぼします。セロトニンが出ると、自然に目尻が下がって口角が上がるのです。そのため、嬉しいことがあってセロトニンが出ていると、笑ってはいけない場面でも笑顔になってしまい、周囲のひんしゅくを買うといったことも起こります。
このセロトニンと笑顔の関係は逆もまた真なりで、口角を上げるとセロトニンが出ることがわかっています。私たちの脳はだまされやすくできていて、本当に楽しいことや嬉しいことがなくても、意識的に口角を上げて笑顔を作るだけで、セロトニンの放出が活発になるのです。
ということは、作り笑いでも免疫力が上がるということで、これを利用しない手はありません。
そこで私は、セミナーや講演会のときには、みなさんに1分間「好き好きエクササイズ」をしてもらうことにしています。方法はとても簡単で、声に出して「好き、好き」と繰り返すだけ。
「す」で思い切り口をすぼめ、「き」で思い切り口角を上げるのがポイントです。
口角を上げることでセロトニンが放出されますし、「スマイルエクササイズ」と同様、口の周りにある口輪筋が鍛えられて、頬のリフトアップ効果もあります。
また、唾液も活発に出ますから、唾液に含まれる消化酵素もよく働いて、代謝も上がります。このエクササイズをご紹介すると、「1日何回ぐらいやればいいですか?」と聞かれることがありますが、何回でもかまいません。薬と違って副作用も依存性もありませんから、好きだけやってかまわないのです。
な
怒ったときは、口角を上げる
怒りが湧いて、「バカヤロー!」と怒鳴りたくなったとき、あなたならどうしますか?
私は、無理にでも口角を上げることにしています。端から見たら気味の悪い笑い顔かもしれませんが、それでもいいのです。
強い怒りは、なかなかコントロールできません。寛容の心で何事も許すとか、いつも明るく振る舞うというのは理想ですが、そう簡単にできることではないでしょう。けれども、口角を上げるだけなら、比較的簡単にできます。怒るのはやめられなくても、怒った顔をやめることは、少しの努力でできるのです。
「不思議なことに、口角を上げるとそれだけで、怒りの激しさが弱まります。ものすごい勢いでやってきた怒りが、ふわっと速度を秘めるのです。これも、口角を上げたことでセロトニンが放出されたからだと思いますが、みなさんも是非やってみてください。
うれしくなくても、楽しくなくても、口角を上げるクセをつける。これが幸せホルモンのセロトニンを出すコツです。
いざというとき口角を上げるには、日頃のトレーニングが大事です。「好き好きエクササイズ」や「スマイルエクササイズ」ももちろん役に立ちますが、私はそのほかにもまだやっていることがあります。玄関に鏡をかけておいて、出かける前にそれを見て笑うのです。これも、端から見たらちょっと気持ち悪いかもしれません。けれども、笑ってから出かけることで、1日を気分よく過ごすことができます。みなさんも、口角を上げて1日を過ごしてみませんか?
(宇多川久美子著書:『薬を使わない薬剤師の「やめる」健康法』より抜粋)
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