自分の「免疫力」こそがいちばんの薬──抗生剤では風邪は治らない
がんは国民病ということで、日本では平成26年より学校で「がん教育」が行なわれることになりました。
現在、どのような形でやるか、活発に議論がされています。しかし、何十年も先に罹る病気のことを教えるよりむしろ、大切なことがあると思います。
今、むしろ必要なのは「風邪教育」ではないでしょうか。それは生徒、児童にとって実益のある教育になりますし、抗生剤乱用の防止にもつながるからです。
教材としてお勧めなのは、米国小児科学会が作成した、子どもを持つ親を対象にした「インストラクション」です。シンプルで分かりやすいうえ、風邪に抗生剤は不要であることが、表現を変えて何度も強調されているのがいいと思います。
そして何より、自分の「免疫力」がいちばんの薬であることが強調されている点、解熱剤という言葉が一度も出てこない点も高く評価できます。
このインストラクションは、そのまま大人にも転用できる内容ですので、以下に抄訳を記したいと思います。日本の常識とかなり違うので、戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、これが世界の常識なのです。
抗生剤
●抗生剤はどの薬よりも威力がある重要な薬です。適切に使われれば命を助けてくれますが、不適切に使われると有害になることもあります。
●風邪のようなウイルス感染症に使用すべき薬ではありません。
細菌(菌)とウイルスは別物
●大半の感染症は細菌かウイルスが原因で起きます。抗生剤は細菌が原因の感染症に効く薬で、風邪などウイルスが原因の感染症には効きません。
●せき、のど痛を伴う風邪はほとんどがウイルスによるものですが、まれに細菌が原因のものもあり抗生剤はそれには効きます。
●もし、抗生剤を飲んだあと風邪が治ったとしても、それは抗生剤ではなく、自然治癒力によるものです。
耐性菌
●抗生剤の効かない細菌=耐性菌が増えています。耐性菌は通常使われる抗生剤では死にません。感染すると入院して強力な抗生剤を使った治療が必要になることもあります。ときには、どの抗生剤も効かずお手上げになることもあります。
●抗生剤が処方されればされるほど、耐性菌に感染するリスクが増します。
我が子をどう守るか?
●医師が必要と認めたとき以外、抗生剤を使わないことです。抗生剤は、せき、のど痛、鼻水を治すことはできません。子どもには自分自身の力で風邪を治す力が備わっています。
風邪をひきやすい人は予防用のマスクを外し、喉の粘膜を鍛えるべき
このインストラクションにあるように米国では学会が率先して、
風邪に抗生剤は効かないということ
風邪は患者さん自身に備わっている力、つまり免疫力で治る
ということをハッキリと示しているんです。
とくに日本との違いを痛感するのは後者の方です。日本で「風邪教育」をする場合、何よ
りも必要なのは、風邪を治す主役は「免疫力」であって、総合感冒薬や解熱剤などの「薬」ではないということを子どもたちに理解させることです。
いちばんいいのは、風邪をひいたとき、布団にくるまって1日〜2日寝ていれば、そのうち汗が出てきて、いつの間にか治っているという経験を自分ですることです。
最近、感じるのは、お母さんが薬に頼らずに風邪を治す方だと、子どもも真似をするので 薬いらずになることが多いのですが、お母さん自身が免疫力を実感したことがないと、子どもたちまで風邪は薬で治すものと思い込んで、病院好き、薬好きになってしまうことです。
このように人に必要なのは、十分に眠って汗をかけば風邪は治ることを実際に体験することだと思います。
小さな成功体験さえあれば、自分に「免疫力」という〝すごい力〟が備わっていることがわかるので、風邪気味になっても、ただ寝るだけで治すようになります。
最近はテレビの誇張された健康情報を真に受けて、菌恐怖症、ウイルス恐怖症の人が多くなっています。
とくに若い人に多いのが特徴で、冬場になると電車の中などで、予防やマナーとして、マスクをしている人をよく見かけます。前の座席に座っている人たちが全員、口にはマスクをして、手ではスマホをいじっているのを見たときには、何とも言えない気持ちになりました。
そうした人たちを見ると、親心で若いんだからマスクなんかとって、喉の粘膜を鍛えなさいと言いたくなります。
マスクを取れば1〜2回風邪をひくかもしれません。それでも冬の外気を直接吸い込んでいれば、喉の粘膜が鍛えられて風邪をひきにくくなります。
とくに将来、海外勤務になる可能性がある人は、そうする必要があります。
ここにきて日本はインドおよび、アセアン諸国との結びつきが強くなっていますが、マスクで風邪を予防している人がインドに転勤になったら、どうなるのか心配になります。
インドでは路地脇に牛や人の糞が転がっているのが普通です。食事や水に気を付けていても下痢することが少なくありません。
抗生剤がほとんど効かない新種の多剤耐性菌が拡散していることでも知られ、死者もたくさん出ています。
そのようなところで頼りになるのは、自分の免疫力です。ですから、平素からしっかり鍛えておきましょう。
(文=宇多川久美子 日本人はなぜ、「薬」を飲みすぎるのか?より抜粋)
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