「サプリメントは薬とは違うから、飲んでもいいのでしょうか?」
このような質問をされることもよくあります。
健康意識が高い人ほどサプリメントをとっているのだと思いますが、食事には気をつけている一方で、サプリメントを飲むというのも、違和感を覚えます。
たしかにサプリメントの場合、薬に比べれば激しい副作用はないでしょう。でもサプリメントも人工的につくられた合成品であることに変わりはなく、頼り過ぎれば薬と同じではないかと考えます。
サプリメントはあくまでも「健康補助食品」。偏りがちな栄養を補うために一時的に飲むならいいのですが、野菜が嫌いだからとサプリメントを飲み、不足を補うのは本末転倒ではないでしょうか。
また、「ビタミンC」や「食物繊維」など、必要とする成分だけを取り出して凝縮して体内に入れても、それがどれだけいい影響をもたらしているかは疑問です。
たとえば「ビタミンCがレモン○個分」といった表記も食品もありますが、ビタミンCが吸収されるためには鉄分などほかの栄養素も必要ですから、それをそのままとっても、私たちの身体のなかできちんと働いてくれるわけではないでしょう。やはり、食物そのものに含まれる生命力や自然の力にかなうものはないのです。
人間の身体は想像以上に緻密にできており、そうそう単純なものではありません。サプリメントのような錠剤や粉末で栄養をとろうとしても、身体はそれをどれだけ「吸収しよう」と思うでしょうか。やはりおいしそうな食事を目で見て、「食べたい」という気持ちがわくことで、身体も食事を受け入れる準備をします。そこで必要な栄養も吸収してくれるのです。
人間も自然から生まれた生物です。やはり同じように生命力を持った食べものから栄養を吸収するようにできているのだと思います。
どうしてもサプリメントを飲む必要があるなら、せめて人工的につくられた合成品ではなく、天然由来のサプリメントを選びましょう。
それでも、サプリメントに依存しすぎるのは「薬教」と同じ。栄養は食事からとるのが基本です。サプリメントは栄養を「補助」するものであることを、もう一度強調しておきます。
「身体にいい食品」は人によって違う
私は万人に合う食べものはないと考えています。
食事はとても大切ですが、「何を食べるといい」という考え方はある意味で危険です。なぜなら、人それぞれ育った風土が違うからです。
「風土」は「フード」であるという言葉がありますが、やはり生まれ育った土地のものが身体に合うようにできているのです。身土不二という言葉も同じで、身(からだ)と土(環境)は別物ではありません。
人は本来、その土地でとれたものを食べて環境になじんでいきます。人間も自然の一部なのです。
たとえば「今、アメリカで流行っている健康にいい食品だから」といってその食べ物を日本に持ってきて食べたとしても、ある意味ではナンセンスです。なぜならアメリカ人と日本人では、DNAが違うのですから。
ちなみに日本人は昔から野菜や海草類など食物繊維の豊富な食材を食べてきたため、欧米人に比べて腸がとても長いといわれています。
寒い国に住んでいれば、身体を温める食材を食べます。肉を食べるのは本来、皮下脂肪を貯めて寒さをしのぐのにちょうどいいからなのです。牛の体温は39~42度ととても高いもの。牛の身体のなかで溶けている脂肪が人間の体内に入ってくると、体温が低いので溶けず、皮下脂肪として蓄えることができるというわけです。
南の暑い国に住んでいれば、身体を冷やす食材を食べます。バナナやパイナップルなど南国の果物は本来、身体を冷やすもの。その国、その土地に合った食べものというのは、昔からの生活の知恵でもあるわけです。
日本人にはお米
では農耕民族である日本人はというと、やはり日本の伝統食、お米です。
日本人では牛乳でおなかを壊す人がいます。これは乳糖を消化する酵素が少ないか、その働きが弱いため。そのためあらかじめ乳糖を分解してある牛乳もあるようですが、それもナンセンスな話です。牛乳を飲んでおなかがゴロゴロするのは、「飲まないで」という身体のサインです。
先ほど述べた寒い国の人では、牛乳でおなかを壊す人はまずいません。寒い所で暮らす人々は、肉からたんぱく質を得ますが、肉にはカルシウムが少ないため、生活の知恵として牛乳を大量にとるようになったのです。
同じように、欧米人は海苔を消化する酵素を持たず、海苔を消化する酵素を持っているのは世界中で日本人だけというという研究も報告されています。お寿司の巻物でもおなかを壊してしまう欧米人もいるといいます。
日本の食生活が欧米化したといっても、せいぜいここ50~60年のこと。やはり先祖代々日本人が食べてきたものが身体に合うようになっているのです。
民族によって身体に合う、合わないがあるのは当然ですが、もっといえば個人単位でも合う、合わないはあります。栄養学的に見て「栄養がある」ことと、「自分に合う」かどうかは必ずしも一致しないのです。日本人であってもお米が苦手だったり、お米を食べると胃がもたれるという人もいるのは事実です。人それぞれの部分があるのは仕方がないですが、それでも生まれ育った土地のものを食べるのは基本でしょう。そのなかから、自分に合ったものを探していってほしいと思います。
見直したい日本の食文化
繰り返しになりますが、人がその環境になじむためには、その土地柄に合った食べものをとることが大切で、日本人にとっての理想の食事は、当然のことながら和食です。
日本人が先祖代々食べてきたものは、私たちの身体のなかで消化・吸収しやすいようにできています。これはいくら食生活が欧米化しようと、変わらない事実です。
日本人の食生活が欧米化したことで、大腸がんや乳がん、メタボリックシンドロームになる人が増えています。それは、農耕民族である日本人の体質に合っていないからだと考えられています。欧米人が海苔を消化する酵素を持っていないように、日本人も肉や乳製品を消化する酵素の量が少ないこともわかっています。
今、日本で唯一自給できているのはお米だけなのです。お米だけなら、100%国産で賄えます。鎖国されていた江戸時代は食糧自給率は100%でした。お米中心の食事で、国産ですべてまかなえていたのです。
時代は流れ、そこに主食としてパンが入ってくれば、お肉が食べたい、乳製品が食べたいとなってくるでしょう。輸入したものでないとマッチしなくなってきたために、今の食生活の欧米化が進んだのです。
もちろんそれがすべて悪いとは言いませんが、もっと主食であるお米を中心に考えていけば、日本の食文化は揺るがないのではないでしょうか。
ご飯、みそ汁、ぬか漬け
日本の伝統食といえば、ご飯、みそ汁、ぬか漬けです。
みそ汁は日本が世界に誇れる発酵食品です。
なぜなら、味噌は大豆と米と麦と食塩などからつくられた発酵食品。ここに根菜類を入れ、わかめや昆布といった海藻類も入ってくれば、食品としては完璧なのです。今、「酵素ダイエット」などといって、酵素や発酵食品が見直されていますが、何も目新しいものではありません。ぬか漬けにしろ納豆にしろ、昔から日本には発酵食品がたくさんあったのです。
ちなみに私の食生活で外さない3点セットはお米と味噌汁とぬか漬けです。精米したらぬかが出てくるので、そこでぬか漬けができます。
ぬか漬けはハードルが高くてなかなかできないという人もいるでしょう。私は玄米を三分づきに精米して食べています。三分づきにするとぬかがでるので、それで即席のぬか漬けをつくるのです。保存袋に塩と水と野菜を入れて作るので、量が少なくても袋の外から手で揉めば、半日程度で簡単にできるのです。
糠にはビタミンB1などが豊富に含まれているので、できればお米を食べるときは白米ではなく、玄米もしくは分づき米を食べるといいでしょう。
私は忙しく出張も多いので、正式の糠床はできません。そのため、昔ながらの深い味わいはないかもしれませんが、すぐにできてとても便利です。
パンは大丈夫?
年輩のひとり暮らしの方にお話を聞くと、朝はパン食ですませているという人がとても多いことに驚きます。
昔ながらの日本食をずっと食べてこられた年代の方でさえそうなのです。その背景には、パン食のほうが手軽、安いなどといったこともあるのでしょう。
くり返しお話ししているように、日本人の体質にお米は最適なのです。小麦粉は、もともと寒冷で乾燥した気候の土地できたものなので、日本人が食べると身体は冷えてしまいます。パンとご飯を見比べてみればわかるように、パンはパサパサと乾燥しています。もともと乾燥した気候でつくられたものだからです。
もちろん私もおいしいパンは好きですし、食べたい気持ちもわかります。でもパンばかり食べていると、身体が冷え、代謝機能を低下させる可能性もあります。
それに比べてご飯は、ほどよく水分を含み、粘り気があり、湿度の高い日本の気候に合っています。ご飯は身体を温める作用もあるため、代謝機能を高めたり、免疫力をアップさせる効果も期待できます。小麦粉に比べ、日本人の身体に消化・吸収されやすいのは明らかです。
スーパーなどでは6枚切りの食パンが100円を切るほどに安く売られていますが、これも食品添加物などが心配です。スーパーで食パンを買っていたのを、街のパン屋さんで買うようにするだけでも大きな一歩です。
ですがもう一歩進んで、朝のパン食をご飯に替えてみるだけでもいいでしょう。
もう一度、ご飯、味噌汁、ぬか漬けという和食のよさを見直してみてください!
(文=宇多川久美子「長生きするのに薬はいらない」より抜粋)
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