認知症は体内時計を狂わせる
体内時計機構と恒常性維持機構は、互いに補いあって、睡眠と覚醒のリズムを調整していますから、どちらかのシステムに不具合が生じても睡眠のリズムが乱れ、さまざまな不眠症状が出現してきます。
例えば、高齢者の場合には、加齢に伴ってメラトニンの分泌が低下してきますから、体内時計の精度も下がるのは、ある意味で仕方ないことです。そのため、睡眠時間が短くなったり、浅くなったり、早朝に目が覚めたりといった不眠の不具合が出現してきます。さらに、認知症になると、健康な高齢者にありがちな睡眠の不具合が、より深刻になってしまいます。
認知症の中でもアルツハイマー型認知症は、体内時計のある視交叉上核に変性が生じやすいのが特徴です。睡眠と覚醒についての長さや深さ、そのリズムは体内時計がコントロールしているため、体内時計の精度が落ちると、短時間の眠りが断続的に続いたり、昼夜が逆転したりと、不規則なリズムの睡眠になります。
また、アルツハイマー型認知症に次いで多いレビー小体型認知症は、レム睡眠のスイッチのON/OFFを切り替え、睡眠時の筋肉の緊張をコントロールする脳幹に変性が生じます。そのため、「レム睡眠行動異常」が起こり、夢を見て奇声を発したり、暴れたりといった症状が現れてきます。
こうした認知症に対して、睡眠薬を処方することも多いですが、それによってせん妄(時間や場所が急にわからなくなる見当識障害、幻覚・妄想、情動・気分の障害)が生じたり、ふらつきによって転倒し骨折したりする事故も多くなります。
さらに、アルツハイマー型認知症では、脳内の催眠作用に密接に関わっているBZ受容体も損傷してしまうため、BZ系の睡眠薬の効果が得られにくいという指摘もあります。
そのため、体内時計のリズム調整を促すために、日中に運動したり、昼間に太陽光をたくさん浴びることが、治療として行われています。実際に、太陽光をたくさん浴びるほど、尿中のメラトニン代謝産物が増加することがわかっています。
(宇多川久美子著書:『睡眠薬その1錠が病気をつくる』より抜粋)
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