『春苦味、夏は酢の物、秋辛味、冬は油と合点して食え』。これは明治時代の食養研究家の石塚左玄氏の言葉です。
『春は苦味』→フキノトウや菜の花などの野草や山菜などアクのあるものは、冬の間にたまった脂肪分を排出してくれます。
『夏は酢の物』→食欲が落ちる夏は、さっぱりとした酢の物。キュウリやトマト、ナスなどの野菜は体を冷やしてくれます。
『秋の辛味』→夏の間に消耗した体力を補うため、食欲増進をしてくれる辛味が効いたダイコンおろしなどです。
『冬は油』→寒さの予防に、脂肪分を取って抵抗力を養います。
季節ならではの食べ物をその季節に食べることは、こうした意味があるわけです。
フキノトウやツクシ、タラの芽、山ウド、ゼンマイ、フキ、ワラビ、タケノコなど、春の山菜には苦味のあるものが多いです。
春野菜には、抗酸化作用の高いポリフェノールやビタミンCなどが多く含まれ、新陳代謝を促す成分も多く含まれていて美容にもうれしいですね。
冬に新陳代謝の悪くなった体内から毒素を出すため、また、冬の間にたまった脂を流すため、春の野山で採れる野菜は苦いとか。
子どもたちがこれを嫌がるのは、苦いものに対して警戒心という本能がそうさせているようです。
幼いとき、フキノトウや山ウドをおいしそうに食べている親を見て「どこがおいしいんだろう……」と不思議に思ったものでした。
季節に合った食べ物を取ることは、人間にとって一番意味のあることではないでしょうか。
「フードは風土」という言葉もあります。その土地でとれたものが、その土地の食事を決めるという考え方です。
季節の恵みを感じ、楽しさを感じることができる食事の場を作っていきたいですね。
(文=宇多川久美子)