「下痢止め」は、ウイルスを腸にとどめる
私は「カジュアル飲み」には否定的ですが、市販薬をお守りとして持ち歩くのは、
必ずしも悪いことではないと思います。薬にはプラシーボ効果があるからです。
実際には飲まなくても、持っているだけで安心感を得られ、気を強く持てるという
のならば、持ち歩く価値もあるのでしょう。
お守りになることの多い市販薬の一つに、下痢止めがあります。
最近、過敏性腸症候群に悩まされている人が非常に多くなっています。過敏性腸症
候群とは、下痢や便秘などの便通異常が、おなかの痛みや張りなどの不快感をともな
いながら、くり返される病気のことです。
原因はストレスといわれています。
過敏性腸症候群で目立つのは、朝の通勤ラッシュ時に電車内で腹痛に襲われるタイ
プです。「各駅停車症候群」といわれています。毎朝のように腹痛が生じるので、駅
間の短い各駅停車にしか乗れない様子にたとえて、こう表現されています。
各駅停車症候群の人にとって下痢止めは救世主のような存在でしょう。
すし詰めの電車内で、下痢の痛みと排便したい欲求を耐えぬくのは大変なことです。
水なしで飲める下痢止めなども登場しています。「これを持っているから、電車に乗
れる」と心強く感じている人は多いと思います。
しかし下痢止めは、ノロウイルスなどの感染症の場合には、決して使ってはいけま
せん。下痢止めには、過敏になっている腸の活動を抑える作用があります。病原性を
持つウイルスが腸内で暴れているときに、下痢止めを飲んで排便を止めてしまっては、
ウイルスを腸内に長くとどめてしまうことになるからです。
しかし、各駅停車症候群の場合は、ストレスが原因で腸の動きが過敏になっている
状態。持ち歩いて、「どうしても必要」というときだけ助けてもらうのは間違った使
い方ではないと考えます。
「下痢の痛み」は人生を変えるチャンス
各駅停車症候群になるのには、原因があります。
たとえば、仕事や職場にストレスを感じている人もいるでしょう。そのために毎朝
下痢を起こすのだとしたら、今の会社生活が、自分で思っている以上のストレスになっ
ていることを表しています。身体の声をキャッチしてあげてください。
今の時代、仕事を手放すのはとても勇気のいることです。しかし、各駅停車症候群
になるほどのストレスを隠しながら一日一日をくり返していれば、次にやってくるの
は、もっと深刻な病気です。
心と血圧はストレスに敏感に反応しますから、すでにうつ病や高血圧症を発症しや
すい状態にあるかもしれません。さらに怖いのは、免疫力が低下することによってが
んなどが発症しやすくなることです。そうしたリスクは十分に考えられます。
たった一つしかない命が脅かされるくらいならば、各駅停車症候群の痛みを、人生
を変えるチャンスに転じてみることも考えるべきでしょう。私も薬剤師の白衣を脱い
だとき、たくさんの人からいわれました。「せっかく薬剤師の資格を取ったのに、そ
れを捨ててしまうなんて馬鹿ね」「これからどうやって生活するの」。しかし今、私は
自分のやりたかった仕事ができるようになりました。薬のよさや、怖さなど、薬剤師
だからわかることはたくさんあります。白衣を脱いだからこそ、より多くの方の、健
康づくりのお手伝いができるようになったのです。
仕事や生き方に決まりはありません。
どんなふうに生きるか、決めるのは自分自身
です。仕事をやめるのが難しくても、趣味や「楽しい!」と思える時間をどんどん取
り入れていくだけでも、ストレスは大きく軽減できるでしょう。
(文=宇多川久美子『その「1錠」が脳をダメにする』~薬剤師が教える薬の害がわかる本 より抜粋)
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