効き目の強い「第1類」の薬がネットなどで気軽に購入できるようになり、特に鎮痛剤に依存する女性が増殖中だという。
しかし、強い薬には当然、相応の副作用がある。
市販薬に頼りすぎる危険性を「薬をつかわない薬剤師」が解説した。
最近、消炎鎮痛剤の高機能化、高価格化が進んでいる。処方箋なしで買える一般医薬品(以下、市販薬)は副作用などのリスクに応じ、もっともリスクが高い第1類から
第3類まで3グループに分けられているが、医療現場でも高いシェアを誇る鎮痛剤が、2011年に第1類の市販薬として発売され大ヒットを記録。
さらに13年12月に薬事法が一部改正され、対面なしでも第1類の強い薬が購入できるようになったことで、ネットなどで気軽に買う人も増え、シェアが拡大した。
より強く、早い効き目を持つ薬が売れるようになったことで、各社が相次いで1箱千円以上の消炎鎮痛剤を発売。
主な購買層は30代以上の女性で、いずれも売り上げは好調だという。また、PMS(月経前症候群)やむくみなど、女性の悩みに向けた治療薬も発売されており、話題を呼んでいる。
しかし、薬に頼りすぎるとかえって健康を損なう恐れも。
「薬の多くは、症状を抑えるだけで病気そのものを治すわけではありません。すぐに薬に頼ることによって、かえって体調が悪くなるという怖さもはらんでいます。そもそも、副作用のない薬など、この世に存在しません」
そう語るのは、自身も以前は1日17錠飲むほど薬漬けで、痛みと不調のオンパレードだったという薬剤師の宇多川久美子さんだ。薬に依存するリスクと、薬に頼らない暮らし方について伺った。
鎮痛剤は冷え症や慢性胃痛、感染症の原因に
まずは消炎鎮痛剤について。
鎮痛成分にはさまざまな種類があるが、これらは「NSAIDs」と総称され、基本的な作用は同じだ。
「生理痛も頭痛も、痛みの原因はプロスタグランジンという物質。プロスタグランジンには血管を拡張させ炎症を起こしたり、体温を上昇させる働きもあります。
NSADsはこの物質の分泌を抑えることで痛みを和らげ、熱を下げているのです。
しかし、プロスタグランジンには胃を守る作用もあるため、鎮痛剤で分泌を抑えると、胃痛を起こすこともあります」
胃痛の副作用は比較的よく知られているが、宇多川さんは、NSAIDsが血管を収縮させることで起こる「体温の低下」にも警鐘を鳴らす。
「ドクンドクンと脈打つごとに痛むのは、血管が拡張して神経を剌激しているから。鎮痛剤は血管を縮めてその痛みを鎮めます。
けれど、常用すれば血流が悪化。NSAIDsは解熱剤としても使われているので、女性の冷えを促進していると思われます』
冷えは痛みを増幅させるため、鎮痛剤を飲みすぎると体が冷え、かえって痛みの原因ともなる。
「また、鎮痛剤にかぎらず薬には耐性があるため、飲み続ければ効きが悪くなっていくことも。薬に頼りすぎると、悪循環が生まれかねません」
ほかにも、NSAIDsは。スティーブンス・ジョンソン症候群の原因の1つと考えられているが、これは重症になると失明、最悪の場合は死亡する病気。
ロキソプロフェンナトリウム水和物には腸閉塞、アスピリンにはぜんそくといった成分ごとの副作用も報告されており、注意が必要だ。
いっぽう、流行りの『高機能鎮痛剤』は、効き目の早さや強さと共に、「効き目がやさしい」といった特徴もうたっている。
宇多川さんはその危険性をこう語る。
「『効き目がおだやか、かつよく効く薬』がいいのは当然ですが、副作用のない薬などありません。これらの薬の多くは、プロスタグランジンを抑えることで生じる胃痛を防ぐため、『胃粘膜保護成分』を配合します。胃酸を中和することで胃痛を防ぎますが、そうすれば体内に入った雑菌を胃酸で処理する力が弱くなる。感染症のリスクが上がる危険性があります」
胃を保護するマグネシウム剤は下痢を誘発することも。
「何より心配なのは、既存の鎮痛剤より効き目が強くなったことで、かえって薬依存に拍車がかかることなんです』
不眠、PMS、むくみ女性の悩み改善薬は
では、鎮痛剤以外で「女性の悩み』を解消するとうたう薬たちはどうだろう。ストレスで不眠を訴える女性に人気なのが、睡眠改善薬だ。
「向精神薬や睡眠導入剤のように依存の心配は少ないため、そういう意味では危険性は低いと言えるでしょう。ただ、主成分は湿疹やかゆみ、鼻炎を止める抗ヒスタミン薬です。眠くなる副作用があるので、それを主作用として発売したものです。抗ヒスタミン薬と比べるとずいぶん割高という印象ですね。また、鼻水などの分泌物を抑えるため、喉が渇くことも」
さらに、13年にはむくみ治療薬、14年にはPMS治療薬が発売されているが、「いずれも西洋ハーブが主原料なので、漢方的な体質改善をはかるものだと思います。体調を確認しながら注意深く使えば、そこまで危険性はないと思います。ただ、日本での使用実績がないので、日本人の体質に合うかどうか……」とのことだ。
中毒の危険がいっぱいの咳止め
いっぽう、最新薬ではないが、その中毒性が取り沙汰されているのが咳止め薬。
「これは、鎮咳成分のジヒドロコディンや、気管支を拡張するメチルエフェドリンによるものです。いずれも脳の中枢に作用するので、効き目が切れるとだるくなる。はじめは風邪薬として飲んでいたのが、飲み続けることで『飲むとスッキリする』『飲まないと微熱が続いて調子が悪い』という症状が出ることも。これらは完全な市販薬依存です」過去に話題になった「咳止めシロップ中毒」とまったく同じ原理で、危険な状態だ。
このように市販薬に依存するのは体調悪化を招くこともあるが、まったく使わないというのも難しい。市販薬と上手に付き合うコッを聞くと。
「市販薬はあくまで急場をしのぐためにあり、常用するものではありません。やむをえない場合にピンポイントで使うものと心得て、3~4日飲んでも治らなければ休養をとるか、病院に行きましょう」そして、自分に合った薬を選ぶこと大切だ。
「特に鎮痛剤は、効き目に個体差が大きい。効く人もいますし。“眠くなりにくい”とうたう薬で眠くなる人もいますから、自分に合うものを探したいですね」
もっとも大切なのは薬に頼らない体質作り
「今回出てきた症状は、いずれも自律神経を整えることで改善が期待できます。私自身、薬漬けだったころは、頭痛、生理痛、肩こりがひどくて、足もパンパン。階段を這うようにして上っていましたが、体質を改善してから不調知らずになりました」
宇多川さんが自ら実践してきたという「体質改善ワザ」は次のとおり。
「まずは何よりもストレスをためないこと。それには、母性ホルモンを活性化することです。出産や育児中に分泌量が増えるオキシトシンには、安らぎや癒しの効果があるといわれています。日常生活のなかでも、誰かと触れあったり何かを育てることでこのオキシトシンの分泌は活性化できるので、ぜひトライしてみてください」
具体的な方法は5つ。
■家族や恋人に背中をさすってもらう、抱きしめ合う
■ペットの世話をする、触れ合う
■家庭菜園や花を育てる
■ボランティアに参加して人の世話をする
■手料理をふるまう
オキシトシンが増えると「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌も促進される。セロロトニン不足はうつ症状のほか、つらい生理痛やPMSの原因になるため、その分泌が促進されればさまざまな不調が改善する。
さらに、セロトニンの分泌は自律神経のバランスそのものを整えることにつながるため、オキシトシンを活性化すれば、結果的に不調知らずの体質に改善されていくはずだ。
規則正しい生活、バランスのよい食事、質のよい睡眠に適度な運動
「ふだんから。”第二の心臓”とも呼ばれるふくらはぎをしっかり使って歩きましょう。血流もアップし、むくみや冷えも解消します』正しい歩き方のポイントは
下のイラストのとおり。あわせて、代謝を上げる「たけのこエクササイズ」を行えば、体のコリもほぐれ、血流やリンパの流れもスムーズになる。
「体質が変われば、更年期障害も改善します。今回紹介した方法は難しいものではありませんから、ぜひ試してみてくださいね」
オンナの体の痛みと悩み、まずは薬に頼らずに、できることから始めよう!
(2016年8月16日号 女性自身に掲載されたインタビュー記事より抜粋。)
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