私は今まで薬剤師として薬をお渡しする中で、抗がん剤を使う患者さんたちが元気を失っていく様子を数多く目にしました。
これは他の病気の薬とは明らかに異なる様子でした。
「今日から抗がん剤治療で入院するからさ。よろしくね」と笑顔で薬局に声をかけてくださった患者さんが、こんなに早く亡くなるなんて・・と心を痛めたことも一度や二度ではありません。
「薬で病気がよくなる」と信じて薬剤師になった私にとって、これは理解に苦しむ、罪悪感さえ感じる出来事でした。
今回は知っているようで知らない「がん三大治療」についてお伝えしていきます。
「がん三大治療」はベスト3ではない
三大温泉、三大夜景、三大珍味というように、「三大」という表現には一般的に「ベスト3」というニュアンスが含まれています。
では、日本で一般的にいわれている「がんの三大治療」はどうでしょうか?
三大治療とは「手術治療」「放射線治療」「科学治療(抗がん剤治療やホルモン治療などの薬物治療)」を指します。
「三大治療」と呼ばれるのだから、がん治療の中でももっとも優れ、もっとも効果があるものだろうと錯覚しがちです。
日本でいう、「がん三大治療」というのは、保険適用されているがん治療のことです。保険適用される治療法は、3種類しかないのです。
また「三大治療」といわれると、他に主だった治療法はないという印象を持たれるかもしれませんが、そんなこともありません。
保険適用以外の治療方法はたくさんある
保険適用されていないだけで、免疫療法、遺伝子療法、温熱療法、鍼灸など、身体やがんの状態に合えば効果をあげている治療法は多々あります。
日本人にとって、医療は保険でカバーしてもらうという考えがあるため、保険適用される治療だけがクローズアップされ、他の治療が視野に入ってこないのです。
保険適用されているというと、その治療法が王道であり、それ以外は邪道というイメージもあるようです。
しかし、三大治療では「お手上げ」「もはやなす術がない」といわれた人が、他の治療をすることによって、余命を越えて元気に生きているケースは決して珍しくありません。
現に、アメリカではいろいろな治療法を組み合わせた統合治療が広く行われていますし、それによって確実にがんの死亡者数が減ってきていきます。中国では遺伝子治療が国から承認され、積極的に行われているといいます。
日本でがんの手術が多い理由
結局、「三大治療」とは、国が決めたオーソドックスな治療法にすぎません。国のお墨付きですから、医師も安心して行うことができます。
国が認めた医療行為の範囲内でやっていれば、万が一何かあった場合でも、家族も納得しやすいでしょう。
逆に、保険適用外の治療をして、何か問題があれば、「逸脱したことをしたからそんなことになったんだ」と訴えられる可能性は十分に考えられます。
つまり、「三大治療」は治療を行う側の医師にとって極めて無難な治療法なのです。
治療を受ける側からすると効果があるから行われていると思いたいところですが、無難だから行われている面も多分にあります。
また、日本では三大治療の中で「手術」が行われる割合が高いといわれています。
欧米では手術よりもQOLを下げないとして放射線治療のほうがより多く行われているというのに、なぜでしょう?
日本の医学界では手術をする外科医が強い力を持っているから、手術を選択する傾向強いという側面もあれば、日本では胃がんが多く、胃がんに手術が効果的なので、他のがんに関しても手術を選択する傾向強いという側面もあります。
さらには、日本では放射線科の医師の地位が外科の医師に比べて低いため、欧米に比べ、放射線治療は行われる割合が低いとの分析もあります。
「三大」という呼び名がついているのも、そして医師が特定の治療法を強く勧めるのも、さまざまな事情が絡みあった結果です。
日本だけが固執する三大治療
「三大治療」に固執しているのは、もはや先進国では日本だけかもしれません。
「三大治療」は決して「ベスト3の治療法」ということではなく、がんの種類や位置、進行の程度、その人の体質や性格、生活習慣などによって、効果的な治療法は違ってきます。
「三大治療」のいずれかが効果的な人もいれば、そうでない人もいます。
自分にとってのベストな選択をするためにも、「三大治療」を知ることはもちろん、それ以外にもいろいろな選択肢があることをぜひ知って頂きたいと思っています。
(宇多川久美子著書:『薬剤師は抗がん剤を使わない』より抜粋)
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