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胃がんの検査にバリウム検査が必要か?副作用だらけの検査法が無くならない理由

胃がんの検査にバリウム検査が必要か?副作用だらけの検査法が無くならない理由


『ピロリ菌に感染していない人は、ほぼ胃がんにはなりません。』
『ほとんどの胃がんはピロリ菌が感染した粘膜に発生します。』
多くの医師がこう言います。

胃がんは日本では発症リスクの高いがんで、年間約12万5000人の方が発症し、約5万人の方が亡くなっているといわれています。
そのため、「早期発見、早期治療!」と言われているわけですが、ピロリ菌が胃がんの原因ならば、まずはピロリ菌がいるかどうかの検査をして、感染している方だけが胃の精密検査を受けるようにするべきではないでしょうか。
ところが、胃がん検診は、ピロリ菌の有無にかかわらず、まずバリウム検査をして、疑わしい場合は胃カメラで内視鏡検査をするのがスタンダードになっています。
最近では、ピロリ菌検査を行うことも多くなったようですが、検診で必ず行う検査ではありません。

最初に行われる「バリウム検査」


バリウム検査は、正式には、「上部消化管造影検査」と言われ、食道・胃・十二指腸の病変をチェックするための検査で、バリウム検査をする目的は、「胃がんや食道がんの早期発見」とされています。
上部消化管造影検査は、通常のレントゲン写真とは異なり、X線を連続的に照射します。バリウムは、X線を透過しないので、バリウムが口から入り食道、胃、十二指腸へと流れていく様子を見ることができるのです。
がんに限らず、炎症がおきると粘膜面の変化が見られます。滑らかな粘膜面ではバリウムは流れるように通過しますが、ポリープや潰瘍など炎症のある場所にはバリウムが留まるのです。
検査台の上でアトラクションさながらに、グルグルと方向を変えて撮影するのは、バリウムの流れの悪い場所があるかどうか、動画で確認しているのです。

バリウム検査の副作用は?


このバリウム検査にはどのような害があるのでしょうか。
まず、検査の前に多量に服用するバリウムの副作用が考えらます。

頻繁に起きる症状
・吐き気
・不快感
・便秘症状
・腸閉塞
・腹膜炎

重篤な症状
アナフィラキシーショックによる失神、意識消失、呼吸困難
消化管穿孔(しょうかかんせんこう)

これらの頻度は不明ですが、とても注意が必要であることが間違いありません。

また、バリウム検査では連続してレントゲン撮影するので、複数回X線を浴びることになります。
その被爆量は15~20ミリシーベルトで、胸部X線写真を撮影する際の150~300倍の被曝量といわれています。人体に影響がない範囲とされていますが、当然発がんのリスクも高まるでしょう。

食道や胃にバリウムの流れが悪くなる場所があれば、胃がんやポリープなど腫瘍がある可能性が疑われ、次に、胃カメラ検査を行うことになります。
胃カメラ検査は内視鏡検査のことで、胃にカメラを挿入することで、胃の中をモニターで確認することができます。カメラを粘膜面に近づけて観察することができるので、胃の状態を詳しくチェックすることができます。
また、胃カメラで腫瘍などを切除する事も可能で、早期の胃がんなら、外科的手術をすることなく、胃カメラでモニターを見ながら腫瘍を切除する「内視鏡的治療」を行うことも多くなっています。

「バリウム検査」だけでは胃がん、食道がんはわからない!


バリウム検査の所見の中には、胃がんや食道がんの可能性が疑われるものもあります。
このような場合には、医師から「内視鏡検査を受けて下さい」という指示を受けます。

なぜなら、胃粘膜表面の情報は、バリウム検査より内視鏡検査の方がより詳しく正確にわかるからです。

つまり、バリウム検査では「がん」の断定はできないということです。大きなものなら見つけることもできるかもしれませんが、バリウム検査で「早期発見」はできないのです。
バリウム検査で「疑い」があれば内視鏡検査で「確認」するという過程を辿るのです。
「はじめから内視鏡検査をすればよいのではないか」という議論が盛んに交わされていますが、まさにその通り!

身体に良いはずもないバリウムを飲み、ゲップを我慢し、多量の放射線を浴び、下剤を飲んで慌ててトイレに駆け込むメリットは何もないのです

なぜバリウム検査がなくならないのか


そこには大きな利権がからんでいるようですが、冒頭の文章を思い出してください。
多くの医療従事者が
『ピロリ菌に感染していない人は、ほぼ胃がんにはなりません。』
と言っているのです。
そうであるならば、バリウム検査を受けるか胃カメラをするかの議論の前に、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べることの方が先でしょう。
しかも、ピロリ菌検査は採血によって調べることができるので、苦痛も時間もかかりません。

現在では胃がんの98%はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染によって起こることがわかっています。

ピロリ菌は幼少期に胃粘膜に感染するのですが、それが長い年月をかけて炎症を起こし、粘膜は段々萎縮していきます。
そして年間1000人のうち3~4人にがんが発症するのです。ピロリ菌が陰性で胃がんを発症する人もいますが、極めて稀なケースで、ほとんどの胃がんはピロリ菌が感染した粘膜に発生します。

つまり、ピロリ菌に感染していない人はほぼ胃がんにはならないということです。

若い世代のピロリ菌感染は減少していて、50才以下の感染率は20%以下といわれています。ということは、多くの方は胃がん検診を受ける必要がないのです。
ピロリ菌陰性ということは、ほぼ胃がんにならないということなのに、毎年バリウム検診を受ける意味はありません。
まずピロリ菌がいるかどうかの検査をして、陽性の方だけが胃カメラ検査を受けるようにするのです。
胃カメラをうまく呑み込めずに悪戦苦闘した方も多いと思いますが、今は鼻から挿入する細いスコープも一般化し、非常に楽に受けることができます。

現在では、ピロリ菌の感染がわかる胃がんリスク検診(ABC検診)を取り入れている自治体もあります。
ABC検診は、血液検査だけで「ピロリ菌感染」と「胃粘膜萎縮の程度」がわかる検査です。この組み合わせによって胃がんのリスクの判別が可能になります。
更に内視鏡検査を受けることで、効率良く「早期がん」を発見することができるのです。

以上のことから、胃がんのリスクを極力減らすために、ピロリ菌陽性と判定されれば、ピロリ菌の除菌治療を行うことになるわけですが、ではピロリ菌除去にはリクスがないのでしょうか?

(文=宇多川久美子)

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