薬を使わない薬剤師の“健康自立ブログ”

あなたは標準治療を選びますか?それとも代替療法にしますか?

標準治療の代わりに用いられる治療法を、「補完代替療法」といいます。
クリニックなどで行うものだけでなく、瞑想やヨガやサプリメント、漢方、マッサージ、カイロプラクティック、食事療法、運動療法、ストレスを軽くする心理療法といった民間療法も補完代替療法に含まれます。
日本では標準治療以外の補完代替療法を、科学的根拠がないからと、下に見て扱う風潮がありますが、欧米では標準治療の限界を補うものとして、むしろ意欲的に取り入れられています。
「瞑想」は、一昔前の日本では「まゆつばもの」のようなイメージがありましたが、最近ではビジネス誌でも特集記事が組まれるほど、受け入れられてきています。

ヨガも代替療法

海外では代替医療が積極的に取り入れられている


アメリカでは、マクガバン・レポートに「もっとも理想的なのは、元禄時代以前の伝統的な日本の食事」と明記されていたことから、肉中心の食生活を見直す食事療法が積極的に行われるようになりました。
さらにOTAレポートでは、食事療法免疫療法に加え、心の持ち方や暮らし方にスポットを当てた行動・心理療法、食事でとりにくい微量栄養素を補給する薬草(ハーブ)療法、自然な薬物によって免疫を強化する生物学的療法も評価されています。
東洋医学やアーユルベーダ、ヨガ、瞑想、音楽療法などについても、半数以上の医師が補完代替療法として推奨しているといいます。

そして、フレッド・ハッチンソンがん研究センターの報告によれば、
「1997年2月から1998年12月にかけて乳がん、または前立腺がん、大腸がんと診断されたワシントン州西部に住む大人365人を対象に電話インタビューしたところ、そのうちの約97%の人が何らかの代替療法を利用し、その結果ほぼ全員が『体調が改善した』と答えた」というのです。

またドイツでは国立大学の医学部で補完代替療法の授業があり、医師は薬草を処方できるといいますし、スイスでは国民投票の結果、補完代替療法が健康保険の対象になったという話も聞いています。
このように欧米では標準治療と補完代替療法を必要に応じあわせて行う「統合医療」が広がり、「統合医療」はがん治療のスタンダード(標準)になりつつあるようです。

私は日本の標準治療を全面的に否定するつもりはありません。しかし、従来の標準治療に頼っているだけでは、がんの死亡者数は決して減少することはないでしょう。

実際、日本では病院で代替療法を受ける方は、他の病院にも通院するなどして、標準治療と組み合わせていることが多いといいます。
とはいえ、○○療法といった最先端の療法を受けるとなると、治療費がかさんでしまいますし、受けられる人はどうしても限られてしまいます。
しかし、食事療法や行動・心理療法、ヨガ、瞑想、音楽療法、運動療法などであれば、自分の意思次第で生活の中に取り入れていくことができます。 気持ちのもちようがおよぼす病状への影響は昔からいわれていることですし、たとえばヨガをすれば血の巡りやリンパの流れがよくなり免疫力も上がるでしょう。
瞑想をしたり好きな音楽を聴けば心が穏やかになり、病気の原因となるストレスも薄らいでいくでしょう。 多少の出費はあるにせよ、これらのように生活習慣に密着した療法であれば、身体にダメージを与える副作用は一切ありませんし、複数を組み合わせて行っても、大きな問題はありません。
(ただし、サプリメントなど身体に入れるものに関しては、主治医の許可をとりましょう)。 科学的な根拠や臨床例が少ないからといって、効果がないといいきることはできません。
副作用がなく、高額でないものであれば、試す価値は十分にあるのではないでしょうか。

 

お金がかかる代替療法は財布と相談


がんになると、本人はもとより周りが大騒ぎし、「この水がいい」「このお茶を煎(せん)じて飲むのがいい」「このサプリメントがいい」「この健康食品がいい」などと、いろいろな人がいろいろなものを勧めてきます。
その中には見るからに怪しいものもあるでしょうし、胡散臭(うさんくさ)いものもあるでしょう。しかし、そうした種々雑多のものの中に、自分に合って効果的なものが紛れ込んでいる可能性もあります。
「がんになったら宇多川さんは何を使いますか?」とよく聞かれますが、実際にそのときになってみないとわからないというのが本音です。
どんながんかもわからないし、そのときのがん事情が今とは変わっているかもしれないからです。

ですから、現時点では絶対的といえるものはありません。ただ、現時点でよいと思う健康法は生活に組み入れています。
人はそれぞれ体質も体格も違います。同じ種類のがんでも遺伝因子や環境も異なりますし、がんが大きくなった原因もさまざまでしょう。
また、標準治療と同じように、代替療法にも相性があります。人によって似合う服や似合う色がそれぞれ違うように、効く、効かないというのも人によって違います。
ある人にはすごく効いたものでも、別な人にはまったく効かないということはよくあることです

気の持ちようも身体に大いに影響しますから、同じものであっても、誰から勧められたかによって、効く、効かないが違ってくることもあります。

信頼できる人から勧められたものであれば、「あの人が勧めてくれたのだから、効くはずだ」と思うでしょうし、逆に不信感を持っている人から勧められたものは「どうせ大したことはないだろう」と思うでしょう。 そうした気持ちが効き目にも大きく作用する「プラシーボ(偽薬)効果」は、がん治療においても大きいのです。

がんになった方から「これを勧められたんですけど、宇多川さんはどう思いますか」と質問されることもよくありますが、私は必ず「試してみたらいかがでしょうか」とお答えしています。
いつも「薬やサプリメントに頼らないでほしい」といっている私が、あっさり「試してみたら」というので、「いいんですか?」と逆に驚かれることもあります。

健康な人が食事代わりにサプリメントをとったりするのはお勧めしていませんが、 がんになったときは「必死」のときです。
急を要するときだからこそ、使う必要もあるのです。

それで効果が出たという人が実際にいて、信頼する方から勧められたのであれば、試す価値はあると思うからです。
もちろん、がん細胞を元気にするものではないこと、その人の身体をいじめるものではないこと、経済的に困窮しないことが大前提なのはいうまでもありません。
弱みに付け込み詐欺まがいに勧めてくるものではなく、身近な人ががんになった身体を案じ、厚意で勧めてくれるものであれば、試してみてはいかがでしょう。
効く、効かない、合う、合わないは感覚的に判断することもできるかもしれませんし、インターネットで調べれば、どんな組織がどんな材料でつくっていて、どんな効果が出ているのかという一般的な情報はわかるはずです。
一定の人が使っているものであれば、いい意見も悪い意見も書いてあるはずです。そうした情報を偏ることなく集めることも必要だと思います。
ただし、あまり欲張りすぎてあちこち試してしまうと、何が功を奏しているのか、何が治癒のジャマをしているのかもわからなくなってしまいます。
「これ!」と思うものに狙いを定めて、試してみてください。

代替療法はいけないのか?


昔から「病は気から」といわれているように、身体と心は密接に関係していて、精神的なことはダイレクトに身体にあらわれます。
「タミフルを飲んだら次の日にインフルエンザが治った」という方が多いのも、そうしたあらわれのひとつといえるでしょう。
「いやあ、タミフルってよく効きますよね」「すごくひどかったのに、タミフルを飲んだら次の日に熱が下がって、すっかり回復しました」と半ば自慢気にお話ししてくださる方も多いのですが、実はこれはすべて自分の免疫によるものです。
タミフルはあたかもインフルエンザの特効薬のようにいわれていますが、実際のところ、タミフルにはインフルエンザウイルスを殺す作用はありません。ウイルスの増殖を抑えているだけであり、ウイルスと闘っているのは身体の中にある免疫細胞なのです。
では、なぜ「タミフルを飲んだら次の日に治った」という人が多いのでしょうか?
それは、「信じる力」といえるでしょう。
タミフルをインフルエンザの特効薬だと思って飲み、「自分はこれで治る」と強く信じたことによって、免疫力がアップしたのです。
がんについても同じことがいえると私は思います。
「さすがにがんは違うだろう」「がんはそんなに生易しいものではない」と思われる方も多いと思いますが、実際に三大治療を受けなくても、がんから復活した人は世の中にたくさんいます。
住む環境を変える、仕事を変える、食事を変える、運動をする、身体を温める、物事のとらえ方を変えるなど、人によってその方法は異なりますが、日常生活の何かを根本的に変えることによって、がんの増殖を食い止め、元気に過ごされている方は現に存在するのです。

川島なおみさんの例から学ぶこと


数年前、女優の川島なお美さんががんで亡くなりました。抗がん剤治療を拒否し、ご自身が信じる方からとある療法を受けていたことが報道され、そんな彼女の行動を非難する人も少なからずいました。
「ちゃんとした治療を受けないから死んでしまったんだ」「○○療法なんかに頼るから、最終的にあんなやせ細って死んでしまったんだ」と。
しかし、本当にそうなのでしょうか? 川島さんが抗がん剤治療を受けていたら、苦しむことなく、生活の質を落とさず暮らすことができたのでしょうか? それは誰にもわからないことです。
人というのは、一人ひとりが何にも替えようのないたったひとつの存在です。もちろん、がんになった身体というのもひとつしかありません。

たったひとつしかない身体だけに、抗がん剤治療を受けた場合と、抗がん剤治療を受けずに代替療法に頼った場合とを比べることはできないのです。治療の効果は千差万別だからです。

国のお墨付きである標準治療といえども、本人が拒否する治療を無理矢理行ったところで、よい効果があらわれるとは私には思えません。
心がその治療を拒否すれば、身体も同じように拒否するかもしれません。
抗がん剤治療を受けないことで、彼女はギリギリまで舞台に立てたといいます。
最後まで女優でありたかった彼女にとっては、その療法こそが生活の質を落とさない、もっとも効果的な方法だったのかもしれません。

人の選択、人の生き方に対し、誰も口を挟むことはできません。
本人が真剣に情報を集め、それらの情報を精査し、考えぬいた末に決意し行ったことに対して、周りの人間がどうこういう筋合いはないと思います。

樹木希林さんの例から学ぶこと


女優の樹木希林さんが「全身がん宣言」をしたのは2013年3月のことでした。その後も樹木さんは精力的に女優業をこなされています。「本当にがんなの?」という声さえ上がるほどのバイタリティーはどこから来ているのでしょうか。
樹木さんに初めて乳がんが発覚したのは、2004年のことだったそうです。翌年には、右乳房の全摘手術を受けましたが、2008年には摘出したはずのがんが、腸、副腎、脊髄などほぼ全身に移転していることが発覚します。
樹木さんは初めてがんを宣告された際は、「がん=死」ととらえ、治療も医師に身をゆだねていたといいます。

しかし、再発してからは樹木さんの考え方が変わります。がんに関して、勉強をし知識を深めていく中で、「がんは自分が治す」という心構えになったのです。
樹木さんは「自分に合う医者や治療法、本などを、本気で探すことが大事。自分を知る勉強だと思います。自分の身体のことですから、少し医者を疑うくらいの気持ちでよい治療法を探すことが大切。よい医者に出会う、というよりもその医者のよい部分をキャッチできるかがカギだと思います」という内容を語っています。
そして、樹木さんががんを肯定的にとらえているのは、その数々の発言の内容にもあらわれています。

「私の考えでは、がんで死ぬって一番いいと思うんです。用意ができるじゃないですか。それくらいの感じで生きています」
「がんはありがたい病気よ。周囲の相手が自分と真剣に向き合ってくれますから」
「がんに感謝よね。経験してなければろくに『死』にも向き合わず、主人の内田(裕也)さんのこともちゃんと理解しようと思わなかったかもしれないし」

そして、全身にがんが移転したことを知った後に、樹木さんが選んだ治療は「四次元ピンポイント放射線治療」という代替療法でした。
樹木さんは、自分で選択し、うまくいったはずの放射線治療のことも、周囲には紹介するものの、決して無理強いはしないといいます。

「それは責任が持てない。要するに個々のがんの質が違うからね。人はがんと向き合って自分を知るということじゃないかと思うんです。それがわからなくては、いくらよい治療法があっても、それはただただ一過性のものになるだろうと」
「四次元ピンポイント照射治療」とは、がんの放射線治療法の一種で、縦横奥行きの「立体的照射」に加え、「時間軸」を計算し、がん細胞をピンポイントで放射線を照射する治療です。

樹木さんが治療を受けているのは、鹿児島にある「UMSオンコロジークリニック」です。クリニックのホームページで植松稔院長は次のように書いています。
『一つだけ確かなことがあります。それは、進行がんや転移がんを確実に治す方法などこの世にはどこにもないのに、現実には治る人と治らない人にはっきりと分かれるということです。
そして治った人、病気を克服した人は、ほぼ全員が無理でない形で医療の力を利用しながらも、最終的には自分の力で病気を克服しているということです。(中略)自分の身体の力でがん細胞と闘う免疫細胞にしっかりとスイッチが入ったということを示しています』

樹木さんをがんの淵から救ったのは「四次元ピンポイント照射治療」だと世間的には思われています。
しかし、樹木さんを本当に救ったのは「自分のがんがどういうものかを知ったうえで、それにあった治療法を自ら選択する。選択した治療法に関しても、決して医師任せにしない」という姿勢――つまり「自分が自分に自分で責任を持つ」ということが樹木さんを救った最大の秘訣だったのではないでしょうか。

補完代替療法の弱いところ


代替療法はがんそのものを治すものとは限りません。ほとんどの代替療法はがんを直接叩くのではなく、疲れきってしまった身体の細胞を元気にして、免疫力を回復させることがメインです。
がん細胞に直接作用するものではないので、効果もすぐにはあらわれません。正常細胞に負担をかけることがないというメリットは、効き目がゆるやかというデメリットと背中合わせでもあるのです。
代替療法は即効性が低く、がん細胞にこれ以上大きくならないでいてもらう、もしくは、だんだん小さくなっていってもらうというものがほとんどです。ですからがんとともに生きるという気持ちが大切になります。 つまり、すぐに結果を得たいという人、一刻も早くがんを取り除きたいと思う人には向いていません。

三大治療は即効性が高いことがあるので、そこに安心感を持つ人がいることもうなずけます。
さらに、日本では代替療法が保険適用されていないため、代替療法を行う人の絶対数が少なく、エビデンスがとれません
医療の世界でいうエビデンスとは、特定の治療法や薬を有効とする科学的根拠です。
たとえば、新しい抗がん剤が出た場合、エビデンスをとるために、二重盲検試験といって、その薬を使用したグループと使用しないグループに分け、比較検査をします。そして検査結果から有効かどうかを判断するのです。
しかし、代替療法の場合は、一般的に比較実験は行いません。少しでも多くの人によくなってもらいたいから、希望する人にはすべて試してもらうというのが基本姿勢であるはずです。そのため二重盲検試験をして何%の人に有効だったということがいえないのです。

代替療法に反対する人たちは、エビデンスを出しなさい、比較実験の結果を出しなさい、といいます。しかし、代替療法に関しては、科学的なエビデンスがとれないのが実状なのです。
ですから、「科学的根拠がないものは信頼できない」と思う人にも代替療法は不向きといえるでしょう。

また、代替療法の中には、食品やサプリメントなど、飲んだり食べたりするものも多くあります。そうしたものの中には、悪質なものがあることも否めません。実際、「がんに効く」といって販売していながら、単なる水だったということもありますし、薬事法違反で摘発されているものも数多くあります。

つまり、代替療法は、金儲けを目的とした心ない人たちが付け込むことができる領域でもあるのです。チラシやパンフレットにまことしやかな体験談が載せられていますが、あの体験談にしても捏造かもしれません。
それが確かなものなのか、実際に効果のあるものなのかは、自分で調べるしかありませんし、自分が信じて使うしかありません。
また、中には、実際に効果があるにもかかわらず、抗がん剤と併用すると、抗がん剤の働きを抑えてしまうようなものも存在しています。

三大治療を実践している一般病院の医師の多くは、そうした健康食品に対していい顔をしないことが多いようです。医師の気を損ねてはいけないと、黙って飲んでいる人も多くいることでしょう。
いいにくい気持ちはわかりますが、命にかかわることなので、補完的に取り入れている健康食品等については、本来は医師にもきちんと伝えるべきです。

自分の命をゆだねようと思うのであれば、しっかりインフォームドコンセント(説明と同意)を行ってくれる医師と、こちらのことを隠さず伝えられるような信頼関係を築くのが理想ではないでしょうか。

(文=宇多川久美子「薬剤師は抗がん剤を使わない」(廣済堂出版)より抜粋)


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