薬を使わない薬剤師の“健康自立ブログ”

本日7/13(水)放送クローズアップ現代はオプジーボについて「あなたはどう考えますか ~新薬高騰が医療を壊す?~ 」

昨日のオプジーボの投稿には続きがあり、全6話になっております。
本日のクローズアップ現代がまったく同じ内容でしたので先行して掲載させていただきます。

オプジーボ その費用対効果


前回、オプジーボの薬価が体重60kgの患者さんの場合、点滴1回133万円、1か月332万5000円、半年間で1995万円、一年間継続した場合は3990万円という計算をしました。
現在の医療制度ですと、この額全てを患者さん自身が負担するわけではなく、「高額療養費制度」によって、患者さんの自己負担は一般的に月額8万7千円ほどで済のです。
そして残りは国費や保険料で賄うことになります。
ですから、お金持ちのごく一部の方だけが利用できる「特別な新薬」ではなく現在のところは医師が処方しさえすれば誰でも受けることができるものなのです。

お一人様1年で4,000万円を国が援助してくれる・・・。
どうなるか想像してみてください。

みなさんの想像通りいってしまっては困ります。ということで厚生労働省も対策に乗り出しました。

今年4月に「特例拡大再算定」と呼ばれる制度を導入したのです。
1年間で1000億円以上の売上げがあった場合、その薬の薬価を最大で25%、1500億円以上なら50%下げることが出来るという仕組みです。
高額薬剤4種類が対象となり、オプジーボもその対象となっています。昨年発売されたC型肝炎治療薬「ハーボニー」は32%下げられています。

当然、利益を大幅に削られてしまう製薬会社はこれに反発しています。

多田正世・前日本製薬工業協会会長は、「市場規模拡大だけで薬価を引き下げるルールは、イノベーションの適切な評価に反しており容認できない」と表明しています。
米国研究製薬工業協会のジョージ・A・スキャンゴス会長も「薬価が突然下がるような仕組みがあると、日本に投資しづらくなる」と批判しました。

「特例拡大再算定」に加えて、厚生労働省は18年には薬の「費用対効果」を調べて薬価に反映する方法を試行することも発表しました。
どれだけ延命できたか、生活の質が改善したかなどを数値化して比較するもので、英国やオーストラリアでは導入が進んでいるようです。
今年4月には、費用対効果を分析する対象が公表されました。保険適用の医薬品7種類と医療機器5種類で、オプジーボもその対象の一つです。

その値段に対して効果が低ければ価格を下げるよう、2018年度の診療報酬改定に反映させるということです。

薬剤費を抑えるために、厚生労働省は2年に1回、診療報酬改定で薬価を数%ずつ引き下げてきました。

薬の特許が切れるとその成分を使って価格が安い後発医薬品(ジェネリック)を販売することができますが、厚生労働省はジェネリックの普及も促進しています。医療用医薬品に占めるジェネリックの割合を「18~20年度に80%以上」にするという目標も立てています。

しかし、日本の医療費総額は年々増加を続け、2013年度には、40兆円を超えました。20年前と比べると6割も増えていて、高齢化に加え、医療技術の進歩などが主な要因と考えられています。
さらに、患者の医療費の自己負担を所得に応じて一定額に抑える「高額療養費制度」の利用が大きく伸びています。13年度の全国の支給件数はおよそ5400万件で、支給額は約2兆2200億円となっています。
これらは当然、保険料や患者の自己負担では賄えず、全体の約4割を税金で穴埋めしています。団塊世代がすべて75歳以上となる2020年代半ばになると、医療費は50兆円を超えると予想されています。

患者の自己負担分との差額を負担する企業の健康保険組合や国民健康保険組合など医療保険者の財政もかなり厳しい状態です。
健康保険組合連合会(健保連)の2014年度の算では、1409組合のうち半数以上の組合が赤字となっています。
さらに同年度に健保連の各組合に申請があった医療費のうち、1カ月の医療費が1000万円以上の申請も300件となっています。

オプジーボ導入後の財政は?


肺がんの新規患者は年約11万人といわれています。オプジーボが対象となるのは、「手術による治療が難しく、他の化学療法で効果が出なかった患者や手術後に再発した患者」とされています。
その対象となる患者数を5万人として仮に全員が1年間オプジーボを使った場合、その薬剤費を前回の計算式によって体重60kgで算定すると、
3990万円×5万人=1兆9950万円となります。
これは10兆円を超えたと問題になっている薬剤費の5分の1に当たる金額です。

オプジーボをはじめ、高額薬剤の使用が進み、薬剤費が医療費全体の半分以上を占めるようなことにもなりかねません。
こうなれば、極端な保険料引き上げや増税も必要となるでしょうし、医療給付を抑えるために、現行の治療行為や医薬品の中には、国民皆保険の対象外となるものも出てくるでしょう。当然、自己負担額も高くなります。
不治の病に特効薬ができて治せる病気となったのなら、最善を尽くして治したいと思うのは誰でも同じでしょう。
しかし、その高額薬剤の費用の負担は、健常な人も含めた国民全体に及び税金や保険料の負担は増えていきます。

医学の世界ではコストの話はタブーで、『治療に関わるコストは国が考えるべきで、経済的なことは医療現場で考える問題ではない』という風潮があるようです。
これまでにも、治療法などについて、医学界では「ガイドライン」を策定して、専門医の間で治療の際に活用されてきました。
コスト面に対しても、今後は、高額薬剤が医療全体に与える影響も考慮しながらガイドラインを作っていく必要があるのではないでしょうか。

今まさに、この「オプジーボ」という1つの薬剤の登場によって、現代の日本の医療が抱えている問題が浮き彫りになりました。
現在の国民皆保険の仕組みではどんなに高額な薬剤でも医療用医薬品として認められれば、医師の処方によって誰でも使うことができるようになります。
実際にオプジーボも100歳の患者さんにも使用された例があるようです。

オプジーボのように極めて高額な薬剤も「お金持ち」だけが使えるのではなく、国民誰でも使える薬になりました。
これは本当に素晴らしいことかもしれません。しかし、「夢の新薬」が日本を滅ぼすことのないように、高額薬剤の使用と費用負担のあり方を私たちは今から真剣に考えなければならないのではないでしょうか。

(文=宇多川久美子)


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